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前回のブログでは、「行政書士の仕事は今後むしろ増えていく」と考えているとお話ししました。
その背景にあるのが、日本が世界でも類を見ない“超高齢社会”に突入しているという事実です。
医療や介護、相続、住まい、生活支援、外国人労働者の受け入れなど、多くの分野で高齢者を取り巻く環境はますます複雑化しています。こうした状況において、行政書士が果たせる役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。
今回は、「超高齢社会とは何か」から始まり、そこに潜む課題、そして行政書士としての具体的な関わり方についてお伝えしたいと思います。
「超高齢社会」とは?
「超高齢社会」とは、総人口に占める65歳以上の割合が21%を超えた状態を指します。日本はすでに2007年にこの水準に達しており、現在ではその割合が約30%に達する「世界最速・最先端の高齢社会」となっています。
とりわけ注目されているのが、2025年問題です。団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になることで、医療・介護・福祉などの分野において、かつてないほどの需要と課題が噴き出すと予測されています。
認知症と金融資産「215兆円の壁」
高齢化に伴い、認知症を患う方の増加も深刻な社会課題となっています。
内閣府の試算では、2030年時点で認知症を患う高齢者の保有する金融資産は215兆円にのぼるとされています。これは日本の個人金融資産の2割近くを占める巨大な金額です。
問題は、この資産が本人の判断能力の低下により、自由に動かせなくなってしまうこと。つまり、事実上“凍結”されるリスクを抱えているのです。
医療費や介護費用が必要になっても、本人名義の口座から引き出せず、家族が困るといったケースは、すでに全国で多発しています。
高齢者の課題は「お金」だけではない
そして見逃してはならないのが、高齢者が直面する課題は「資産管理」だけではないという点です。むしろ現場で見えてくるのは、以下のような多分野にまたがる、制度の隙間にある問題です。
- 延命治療の希望・拒否など、医療に関する意思決定
- 介護施設への入居、身元保証人の不在など、介護や住まいに関する手続き
- 独居高齢者の死後の手続きや、家財の整理、役所への届出といった、「死後事務」
- 子どもがいない、あるいは縁が薄い中で、自分の意思をどう残すか
- 高齢者を支える側の外国人介護人材に関する、在留資格や雇用手続きの問題
こうした課題には、医師や介護福祉士、社会福祉士、税理士など、それぞれの分野の専門家が関わっています。
しかし現実には、「誰に相談すればいいかわからない」「複数の制度が絡んで、全体像がつかめない」と感じる方が多くいます。
だからこそ、行政書士ができること
行政書士の強みは、横断的に制度を整理し、必要な書類を整備して、法律に基づく“形”にすることができることです。
行政書士が関われる主な分野には、以下のようなものがあります。
- 任意後見契約書の作成支援
→ 認知症などに備え、あらかじめ信頼できる人に財産管理や手続きの権限を委ねる契約です。 - 財産管理委任契約や見守り契約の整備
→ 銀行や役所の手続きなど、日常的な支援を委任することができます。 - 死後事務委任契約の作成
→ 葬儀・納骨・住まいの解約・行政手続きなど、亡くなった後に必要な事務を他者に委ねる契約です。 - 遺言書の起案・作成支援、相続手続きの代行
→ 遺産をめぐるトラブルを防ぎ、遺志を法的に明確にします。 - 外国人介護人材の在留資格申請・登録支援機関としてのサポート
→ 高齢化によって必要とされる介護人材の受け入れ手続きを円滑に行います。
行政書士が「安心の起点」となる時代へ
高齢化が進む中で求められているのは、「専門的な知識」だけではありません。むしろ、「制度を横断的に理解し、本人や家族が安心できる道筋を一緒に描ける存在」が必要とされています。
行政書士はまさにその役割を担うことができます。
契約書や申請書といった“書類”を通じて、高齢者の不安を整理し、ご家族や支援者に安心をもたらす。
今後、行政書士は「書類をつくる人」ではなく、「人生を支える仕組みを整える専門家」として、地域でますます重要な役割を果たしていくでしょう。
超高齢社会は、社会の課題であると同時に、行政書士の使命が最も問われる時代です。
困ったときに支えるのではなく、「困る前に備える」ことをお手伝いする存在でありたい――そう考えています。
私はまだ開業して日が浅く、経験も発展途上ではありますが、だからこそ一つひとつのご相談に丁寧に向き合い、信頼される存在を目指してまいります。
高齢社会のさまざまなお悩みに、少しでも安心を届けられるよう、これからも学び続け、力を尽くしていきたいと思います。
おきなわ外国人サポート行政書士事務所 大城宏太