はじめに
日本で働く外国人材の受け入れ制度は年々進化を遂げており、中でも「技能実習」と「特定技能」は多くの企業が活用している在留資格です。
近年、技能実習を終えた外国人が「特定技能」にスムーズに移行するケースが増えてきましたが、その手続きや要件、注意点は非常に複雑です。本記事では、行政書士としての専門知識をもとに、技能実習から特定技能への移行について詳しく解説いたします。
技能実習と特定技能の違い
まず、制度の概要と違いを明確に理解することが大切です。
技能実習制度とは
技能実習は、発展途上国の人材に日本の技術・技能を移転することを目的とした制度で、国際貢献を趣旨とするものです。基本的には最大5年間の実習が可能です。
- 在留資格名:技能実習1号~3号
- 最大在留期間:原則5年(段階的に更新)
- 家族の帯同:不可
- 移行の目的:母国への技術移転
特定技能制度とは
一方、特定技能は日本国内の深刻な人手不足を補うための就労資格です。実践的な業務を担う即戦力人材として期待されています。
- 在留資格名:特定技能1号・2号
- 最大在留期間:特定技能1号は5年(更新可能)
- 家族の帯同:1号は不可、2号は可
- 移行の目的:就労・人材確保
最初から即戦力を受入れたい場合、特定技能を受け入れることができます。海外から特定技能の人材を受け入れる場合の在留資格認定証明書交付申請については、また別の機会に更新いたします。
技能実習から特定技能への移行が可能な理由
2019年の入管法改正により、技能実習を良好に修了した外国人は、特定技能1号に移行できるようになりました。これは、技能実習の期間を経て「一定の技能水準を満たしている」とみなされるためです。
具体的には
- 技能実習2号を修了していること(または3号に上がる資格を持つ)
- 受入れ分野が「特定技能」と一致していること
この条件を満たすことで、試験免除で特定技能1号へ移行可能です。
移行可能な業種・分野
技能実習から特定技能へ移行できる分野は、原則として技能実習と特定技能が重なっている業種に限られます。
移行に必要な手続きの流れ
能実習から特定技能への移行手続きには、いくつかのステップがあります。以下はその一般的な流れです。
① 技能実習修了の確認
- 技能実習2号を良好に修了している必要があります。
- 修了証明書や評価試験の合格証明書が必要です。
② 受入れ先企業の選定
- 特定技能としての雇用契約を結ぶ企業を確定します。
- 雇用条件(労働時間・給与など)は日本人と同等でなければなりません。
③ 支援計画の策定
- 特定技能1号では、企業に「外国人支援計画」の策定と実施義務があります。
- 登録支援機関に委託することも可能です。
④ 在留資格変更許可申請
- 技能実習から特定技能への移行は、「在留資格変更許可申請」によって行います。
- 地方出入国在留管理局に書類を提出し、審査を受けます。
⑤ 審査・結果通知
- 審査期間はおおよそ1〜3か月程度です。
- 許可が下りれば、晴れて特定技能1号としての在留が可能となります。
ここで注意が必要なのが、「技能実習」の在留期間満了までに在留資格変更許可申請をして、「特定技能」の許可を受けなければ、原則的には働くことができないということです。
逆算して、在留期間満了の3ヶ月前に申請したらいい、と思うかもしれませんが、所属機関として外国人雇用管理をしてきた私としては、非常に難しいと思います。
(その理由についても、長くなってしまうので別の記事を書きたいと思います。)
そこで、特定技能1号への移行を希望する場合の特定活動などがあります。特定技能の在留資格変更許可申請を行政書士にお願いする場合、特定活動もセットでお願いすると安くしてもらえることが多いので、ぜひセットでお願いするとよいでしょう。
この在留資格「特定活動」についても、またの機会に更新しておきます。
在留資格変更許可申請に必要書類(主なもの)
申請にあたり、申請人に関する必要書類として、以下の書類を提出する必要があります。
- 在留資格変更許可申請書(写真(4×3cm))
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 賃金規定の写し
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 賃金の支払の写し
- 雇用の経緯に係る説明書
- 職業紹介事業者に関する情報
- 健康診断個人票
- 受診者の申告書
- 納税証明書
- 課税証明書
- 源泉徴収票の写し
- 技能実習修了証明書・評価試験結果
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
などがあります。その他にも所属機関に関する書類や分野に関する必要書類などがあり、これらを正確に揃えることが重要です。申請書類の不備は、審査の大幅な遅れや不許可の原因になります。
これらの申請書類を作成できるのは、申請者本人または代理人(本人と特定技能雇用契約を結んだ本邦機関の職員)となっています。
その他としては、行政書士や弁護士だけが本人に代わって書類の作成および代理申請をすることができます。
※ここで注意が必要なのが、登録支援機関の職員はできないということです。
申請書類などを代理だと勘違いして作成してしまうと、行政書士法違反などになってしまいますので十分注意してください。
行政書士のサポートが重要な理由
技能実習から特定技能への移行手続きは、法令や書類の量が多く、企業や外国人本人にとって非常に複雑です。
行政書士は以下のような点で専門的にサポートが可能です。
- 書類作成の代行・チェック
- 支援計画の策定アドバイス
- 登録支援機関との連携
- 在留資格変更申請の取次(代理提出)
- 不許可時の対応・改善提案
特に、申請取次資格を持つ行政書士であれば、本人が入管に行かなくても申請を完結できます。忙しい受入れ企業や外国人本人にとって非常に心強い存在です。
また、当社では登録支援機関もしているため、連携の必要もなくワンストップで対応が可能です。
よくある質問(FAQ)
Q1:技能実習が途中で終わった場合でも移行できますか?
→ 基本的には技能実習2号を良好に修了していることが前提条件です。途中で辞めた場合、特定技能への移行は難しくなります。
Q2:同じ企業で働く必要がありますか?
→ 必ずしも同一企業である必要はありません。ただし、同じ分野内の業務であることが必要です。
Q3:試験を受けなくてもよいのですか?
→ 技能実習2号を良好に修了していれば、原則として技能測定試験・日本語試験は免除されます。
まとめ
技能実習から特定技能への移行は、外国人本人にとっては「日本で働き続けるチャンス」、企業にとっては「即戦力の確保」という大きなメリットがあります。しかし、その一方で、手続きは煩雑で、法令遵守が求められるため、慎重に準備を進める必要があります。
行政書士の専門知識と経験を活用することで、移行手続きをスムーズかつ確実に進めることができます。特定技能制度を活用したい企業様、外国人の方は、ぜひ一度、信頼できる行政書士へご相談ください。